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2013 MANGA Best Selection
〜眼鏡が割れても漫画読み〜


音楽と同じように、漫画も表現手段としてもとても深く、また色々なスタイルがあります。
三者とも音楽と同様に漫画と深く付き合ってきました。
このサイトでは、異質ですが楽しんで頂ければ幸いです。

from INOMATA



今回のこの企画はINOMATA氏と一緒に考えてみました。
もちろん普通に音楽関係者らしく「ベスト・ディスク」と言った括りも悪くないのですが、今回は漫画編。
この3名を選抜したのは他でも無く、私個人が彼等から様々な事を教えてもらっています。
音楽はもちろん、漫画、アニメ、映画の情報なども。 有名人のセレクトも面白いですが、
身近で信頼のおける仲間からの情報が一番響きます。是非ゆっくり楽しんでみて下さい。
漫画やサブカルチャーを毛嫌いする方にもチェックして欲しいです。

「さて、この中から次は何を読もう。。。」と思うだけで豊かな気持ちになれワクワクします。

INOMATA氏、jacob、左近。忙しい中、協力感謝します。
有り難うございました!

from Katsunori Tatenuma (OPUESTO)




・INOMATA
 1977年生まれ。長年某レコードショップ勤務、ショップスタッフ/バイヤー。サブカル愛好家。時々DJ。

・mackie (jacob)
 
1977年生まれ。新潟を中心に活動中。イベント「red race riot!」主宰。オーガナイザー/DJ。

・左近-SAKON-
 1978年生まれ。OPUESTO初期からのcrew。トラックメーカー/DJ。



INOMATA Selection




1位
『悪の華』押見修造

2013ベスト。中学生編すら前フリにすぎなかったのかと思わせる9巻の展開。
人が何かを切り開く瞬間を書ききったあのシーン。このまま終わればいいけども、
それでも人生は続くし春日くんには背負った荷物がたくさんあるので大変です。
現行思春期こじらせもの、あるいは失われた青春を追い求めてもの、
まあそんな感じでいろいろと素晴らしいです。


2位『僕らはみんな河合荘』宮原るり

ギャグ密度 No.1、ただしほぼ下ネタ。古きよきストーリーギャグで、お話は高校生版
めぞん一刻なのでシンプル。だが、ほぼ全ページに下品要素を親の敵のように刻み込んで
いる無駄なスキルに笑うのみ。こういうのは女性のがうまいなぁ。
セリフのグルーヴも素晴らしいです。


3位『逃げるは恥だが役に立つ』海野つなみ

結婚のメリットの一つに、経済的な優遇措置がありますわね。で、これは偽装というか
契約結婚の話。30代半ばまで女性とつきあったことのない男(金はある、見た目ふつう)、
20代真ん中で、学はあるが定職につけず不安を抱える女が、経済的観点からのみで結婚をし
生活を営む。想定されうる悩みが多々でてきて、ちまちまでてくる経済的含蓄が素晴らしいです。


4位『R-中学生』ゴトウユキコ

三人のバカ中学生がメインキャラ。この最終巻では、3人の内、最も変態と思われる男の子の
話をメインに。女の人が画く下ネタ作品はジェンダー的な要素をはらんでいることが多くて、
これもその文脈なんだけれども、ギャグの手法でこんな開放的なラストにもってかれて
本当素晴らしいです。


5位『軍靴のバルツァー』中島三千恒

続きが気になるシリーズ。戦略戦術モノ、皇国の守護者や銀英伝好きはバシっとハマる。
鉄砲伝来とか黒船に代表される蒸気機関やそれにまつわる西洋の最新技術などで、それまでの
価値観が覆され戦場の景色が一変してしまう驚き。もちろん、人殺しが気持ちいい訳ではなくて、
現在なら当たり前とされていることが、なにかのきっかけ、あるいは天才によって価値観の転換で
成し遂げられた、その事を知る気持ちよさが素晴らしいです。


6位『さよならタマちゃん』武田一義

同じ枠だとアル中病棟と迷ったですが、応援の意味も込めて。睾丸、つまりタマに癌ができたので、
それをとった話。発覚、入院、手術、術後の抗ガン剤、院内で出会った人々、その別れ。つまり、
幾多の物語で繰り返されてきた手垢のついた題材なんだけども、それに対して読者を引き込ませる腕。
あの奥浩哉のアシスタントだったということで納得。あるシーンでおなにいをするのだけれども、
その泣けること泣けること。素晴らしいです。


7位『三文未来の家庭訪問』庄司創

アフターヌーン四季賞をまとめた作品集。当時数々の読み手が驚いた「辺獄にて」を収録。
優れたSFは往々にして普遍的な価値をとくと誰かがゆうとりましたが。残酷と救いのバランスが
素晴らしいです。


8位『銀の匙』荒川弘

現代の教養小説。魔の山とか読んだことないですが。鋼の錬金術師でもそうだし、この作品でも、
何かを得る為に何かを犠牲にする等価交換の精神は美しいなと。主人公がしっかり成長して、
キャラクターも魅力的で農に関する興味を引き出して、しっかり楽しめて。そんなマンガが"と畜"を
描く時代まできましたよ、と10代にゴーマニズム宣言を愛読していた自分に伝えてあげたい。
子供がいたら読ませたくなる感じが素晴らしいです。


9位『ワカコ酒』新久千映

いつの間にか流行っていた庶民系グルメマンガ。いろいろあり、これもその流れの一冊なんだろうと
思っていたらしっかり面白かった(失礼っ)。たぶん肝はセリフ。OLらしい主人公は基本しゃべらず
モノローグなんだけど、七五調。川原泉を思い出すリズムが心地よく素晴らしいです。


10位『今日もいい天気』山本おさむ

田舎暮らし編と原発事故編の2冊。田舎暮らし編のリアリティは田舎で育った人にとってはあるある
ネタであり都会で育った人にとっては珍百景なんだろうなと。ベテランゆえの丁寧な描写は原発事故編でも。
一個人が感じる違和感、怒り、環境とのせめぎあい。誠実に、たまに酒と温泉に逃げながら相対するのを
見てなにも感じないはずはない。それでもなんとかやってます、な気持ちをやんわりと感じずにはいられず、
素晴らしいです。


〜総評〜

ある程度候補を絞って、そこから選ぶのがしんどかったです。なるべく、いろんなタイプのものを
選ぶようにしたので、もれたものが沢山(アル中病棟、放浪息子、廻、アイアムアヒーロー、にこたまなど)。
個人的には続き物も面白いし、新しいものも面白いしで、いい一年でした。


2013年11月
INOMATA




mackie (jacob) Selection




1位『サルチネス』古谷 実 (週刊ヤングマガジン 連載終了)

古谷実の作品の中で、1番の素敵な最終回が、描かれた作品だと思いました。読み終えて、
なんの感情で溢れたかわからない涙が流れました。沢山の感情がミックスされた感動です!
「稲中」からのギャグ路線と、「ヒミズ」からのシリアス路線で作風が変わったと思われがち
ですが、この人は一貫して「世の中と同調できない人」っていうテーマがある作品を描いている
だと思っていて、そういう人を主人公において、物語をすすめていくのが、とても良くて、
大好きな漫画家です!次回作も今から期待していますが、できたら、ヤングマガジンではない、
他の雑誌での連載をお願いしたいです。


2位『悪の華』押見修造 (別冊少年マガジン連載中)

この作品を、今、思春期に苛まれているすべての少年少女、かつて思春期に苛まれたすべての
かつての少年少女に捧げます。単行本の裏表紙に書かれた文章の転載ですが、まさにそのとおりの
作品です!あの頃に戻りたいとか、よく耳にしますが、あんなに怖くて暗い時代になんて、絶対に
戻りたくないんですよ。それでもなんとか色々と築き上げて来た今、やっと振り返る事が出来るのが、
苛まれた思春期なんです。主人公とかさなる過去の自分と、今の自分を比べて、その間にある色んな事や
人との繋がりを思いながら涙する作品です。アニメを見逃してしまった後悔もあります。


3位『ハイスコアガール』押切蓮助 (月刊ビックガンガン連載中)

僕たちが憧れていたこと全てが詰まっています!何かにとり憑かれて青春を失った人達が憧れたお話。
こういう女の子が居てくれたら、きっと青春を失わずにすんだ作者が、青春を取り戻すために描いた
作品なんじゃないでしょうか。共感しかない!押切蓮助の作品は「ツバキ」「夕闇特攻隊」「焔の眼」と
色々と選びたかったのですが、それだと押切ばかりになってしまうので・・・


4位『ピコピコ少年』押切蓮助 (コンテニュー 連載終了)

リリースは2009年で、少し前なのですが、「ハイスコアガール」の原点だと思うので選びました。


5位『苺ましまろ』ばらスィー (月刊コミック電撃大王連載中)

箸休め。癒しです。これからの「かわいいは正義の話」をしなくちゃいけないのです。


6位『亭主元気で犬がいい』徳弘正也 (ビックコミックスペリオール 連載終了)

ギャグ、人情、時事、エロ、どれを描かせても天才の徳弘正也。この全部をごちゃ混ぜにして、
風刺を効かせた作品。日常的に流れてくるニュースの中には、本当にそれだけで流してしまって良いのか?
と疑問に感じることが増えて来ている気がするなかで、それを漫画という形で表現して、それだけでは
詰まらないものをギャグやエロを混ぜて描く、本当に天才。
徳弘正也はもっと高い評価を得るべき漫画家だと思う。


7位『コッペリオン』井上智徳 (月刊ヤングマガジン 連載中)

こちらも、テレビアニメスタート記念で。2010年のアニメ化決定のニュースから、色々な事があって、
今年やっとアニメがスタート。お話の内容がアレなだけに、何があったのかは簡単に察しができるし、
アニメは、色んな表現が柔らかくなっていて、やっぱり先ずは漫画を読んで欲しいということで、
今回選びました。勿論、アニメも爺ぃと女子高生が活躍する素晴らしい出来になってます。


8位『紅殻のパンドラ』士郎正宗 x 六道神士(ニュータイプエース 連載中)

攻殻機動隊 ARISEの公開記念です。本屋さんで見つけた時は、ジャケ買い的な感じでしたが、
士郎正宗がちゃんと絡んでる、高度情報ネットワークが発達した近未来のお話になっております。


9位『空が灰色だから』阿部 共実 (週刊チャンピオン 連載終了)

怒涛の様に始まって、怒涛の様に終わった、心がざわつく思春期コミック。後で上げる作品にも
共通の点がありますが、最近ではライトに使われる様になった、青春を拗らせるという表現を、
ヘヴィーに描いた作品。青春を拗らせるって事はどうしようもないトラウマを背負うという事
何だってことを再認識した漫画。


10位『MIX』あだち充 (月刊サンデー連載中)

あだち充の、コメディの中に、色々な要素を取り入れる感じが素晴らしくて○っていうか、
何よりもタッチからの継続として、西村が出て来た時の心の踊り様が凄かった!今年の8月発売の
3巻でついに明青学園高等部編へ。


〜総評〜

色々と選んでみて、まぁ色んな漫画をあっちゃこっちゃ読んでるなぁと・・・
それでも、結果、似たような内容なものを好んでいるんだなと。
音楽でも一緒ですね。色んなものに手をだして、結果、好みのものが固まって来てますよね。
どちらも、自分には無いと困るものになっておりますので、これからも漫画を読み続けますし、
音楽を聴き続けるんだなと思います。


2013年12月
mackie




左近-SAKON- Selection



※2013年に読んだ&2013年の僕に必要だったマンガ10作品です。
ですので、2013年刊行でないものも含まれておりますが、その点はご了承ください。
(順位は無く、50音順での表記です)



『惡の華』押見修造

思春期の少年少女の肥大した自意識、いびつな心の内、形にならないドロドロとした感情や欲求を、
見事に描いている。自分自身の中にある、目を向けたくない闇の部分をブスブスと突き刺し、引きずり
出されるようで恐怖さえ覚えた。なのにページをめくる手が止まらず、グイグイと引き込まれる
感覚は快感であった。が、やはり怖さもあって単行本を買う事を躊躇ってしまい、未だ未購入。
傑作だとは思うが、やや男性の理想しか描いていないように感じ、リアリティーに欠けるなぁ、とも思う。


『う』ラズウェル細木

うなぎと言うテーマだけで、よくぞここまでエピソードを作れるな、と感心してしまう傑作。この手の
ユーモア漫画やギャグ漫画は最終回のまとめ方が非常に難しいと思うのだが、これは本当に見事な
終わらせ方で、良くできた落語を聴いているような、チャンチャン!と綺麗にオチがついたラストに
思わず拍手。


『海街diary』吉田秋生

鎌倉が舞台の人間ドラマ。登場人物みんなが、それぞれに何かを抱え、悩みながら生きている。
生と死、病と言った重いテーマを描きつつも、全体のトーンはカラッとしていて、とても読み易い。
色んな事が起こりすぎて、おいおい、とツッコミを入れたくなるが、そんな事を忘れさせてしまう
ぐらい、この作品の世界観に引き込まれてしまう。本を閉じるのが惜しくなってしまう程で、読み
終えた後もこの作品世界から抜け出せず、現実世界に対応するのが難しいぐらい魅力的な作品。


『俺物語』アルコ x 河原和音

ユートピアのような作品。猛男と大和の純粋で無垢で、誰も邪魔できない二人の世界を
ただただ見つめるべし。こんな子いないよ?、などと言うのは野暮。ただ、4巻以降、ちょっと
失速しているような。3巻までは号泣しながら一気に読んだが、4巻はあれ?っと何か
違和感を感じてしまい、作品に入り込めなかった。作者がちょっとお疲れなのだろうか?


『カフェでカフィを』ヨコイエミ

「office YOU」7月号掲載の未単行本作品。「カフェ」をテーマに、小さな世界の小さな話をふんわりと
描いている。高野文子さんに影響を受けたであろう絵柄もとても魅力的で、この作品の世界にピッタリ。
短いエピソードが3作品描かれているが、その作品が全て違う視点で繋がっている描き方もとても上手い。
ほんわかほっこりしてしまう、素敵なお話。マンガ誌ではなく、女性ファッション誌や情報誌
に掲載されていたらもっと効果的なんじゃないだろうか?もっと世に知って頂きたい傑作。


『吉祥寺キャットウォーク』いしかわじゅん

いしかわじゅんさん待望のストーリーもの。ユーモアものなのに、どこか儚く切なく、寂しい。
独特の静けさと寂寥感が何とも味わい深い作品。


『こんなに優しくされたの』木静謙二

木静謙二さんの短編集。全編かなりエグい性描写で、全てが傑作と言うわけではないが、
中でも「Minority」は人間の業と寂しさ、愛(やや歪んだ)を描いていて切ないが最後に
救いがあってじんわり来る。「Pretty」では青春を、「僕の知らない母」では母と子の愛情を
描いていて、ただのエロマンガの枠には収まらない作品。と能書きを垂れましたが、何よりも
木静さんの絵が好きなのです。


『すーちゃん』益田ミリ

誰しもが抱える不安や怒り、寂しさを丁寧に拾い上げている。結構重く、辛辣な事を描いているが、
ヒョロヒョロとした線で描かれるシンプルな絵が、それを嫌味のないものにしている。切ないけど強い、
そんな作品。映画化もされたようで、未見なので偉そうな事は言えないが、何故にあのキャスティング
だったのだろう?すーちゃんの本質を全く捉えていないように思うのだが。


『みかこさん』今日マチ子

「惡の華」がすくい切れなかった思春期の心の機微を、最小限の言葉と絵で見事に描き切っている大傑作。
すでに自分がどこかに置いて来てしまった瑞々しく青臭い気持ちを思い出す。絵と色が本当に美しく、
シンプルな絵なのに構図も凝っていて、一コマ一コマ全てに感心・感動しっぱなし。詩や短歌を読んでいる
ような感覚になる、とても情緒的な作品。今回のマンガ選は順位をつけていないが、一位をあげるなら
ダントツでこの作品。墓場にまで持って行きたいマンガ。


『無限の住人』沙村広明

長期連載、ついに完結。これだけ長い年月の連載で、これだけスケールの大きい作品をよくぞ見事にまとめた
のは本当に凄いと思う。ラズウェル細木さんの「う」と同じく、本当に綺麗にオチが付いたラストは気持ちが
良かった。あれだけ多くの魅力あふれる登場人物を描きながらも、最後まで誰に思い入れ傾く事なく、俯瞰の
視点でこの物語を描き切った作者はとてもクールな方なんだと思う。でなければ、この作品をまとめ上げる事
なんて出来ないだろうなぁ。お見事でした。長きに渡る連載、本当にお疲れ様でした。



〜総評〜

普段から当たり前のように漫画を読んでいるので、こうして改めて10作品を選ぶのは難しくもあり、
楽しくもあり。
ただ、この宿題を出されたから出会えた漫画も沢山ありましたので、感謝です!
僕の中で『
惡の華』と『みかこさん』は思春期の少年少女が主人公の成長課題もので、全く違う
ベクトルの表現だが、この作品2つワンセットで初めて僕にとっての「思春期」を語れると思う。
異論はあると思うが、この2つの作品にテーマソングを挙げるなら、
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「転がる岩、君に朝が降る」なんじゃないかなぁ、、なんて思う。



2013年11月
左近-SAKON-(OPUESTO)





(2013/12/02 更新)